認知症いろいろ たしかめてください、患者さんの「認知機能」

Dementia Support 2011 Spring

認知症ケアへの新しい風 (連載25)

認知症ケアの専門性

認知症介護研究・研修東京センター 名誉センター長 聖マリアンナ医科大学 名誉教授 長谷川 和夫

 認知症ケアの専門性は、次の三つです。
 1.認知症の基本知識をもつこと
 2.認知症ケアの理念と技法をもつこと
 3.認知症ケアの心をもつこと

 第1は、認知症の基本知識です。認知症の概念、アルツハイマー型認知症など主な原因疾患の特徴、医療の概略等について知ることです。片マヒがあって杖や車いすを使っている運動障害に比べると認知障害は、目にみえる状態ではありません。エピソード記憶障害があると、今体験したことはすぐ忘れるので何回も尋ねなくてはなりません。言語によるコミュニケーションがうまくいかなくなったり、場所の見当が失われたりすると、周囲との絆を失って、間違った考えや行動(BPSD)をしてしまいます。終末期になると、排泄、嚥下障害そして意識障害をきたして死を迎える状態になります。認知症の経過を知ることが大切です。知識は力です。

 第2に、利用者本位の立場にたって支援することはすべてのケアに共通する理念です。パーソンセンタードケアです。前述したように、認知症の人は周囲との絆を失うために強い不安と不自由を体験します。ケアの専門職は、認知症の人の内的体験、心の奥を理解する視点をもってほしいと思います。それにはご本人としっかり向き合って発信している情報を受けること、見る・診る・看ること、そして聞く・聴く・訊くことです。このツールとしてセンター方式のケアマネジメントシートを利用してみましょう。これができるためには必要な条件があります。介護の現場がゆっくりとした時の流れに囲まれていること。そして、なじみの場所が与えられ、家庭的な雰囲気が必要です。安心できる居場所、そして専門職の方の微笑みとぬくもりのある対応です。

 認知症の人との対応には、ご本人のペースに合わせた関わりを基本にして聴くことを第1にすること、目を見て話すこと、言葉だけでなく手を握る、肩にやさしく触れる、微笑みなど非言語的なコミュニケーション等の技法に習熟することです。

 そして第3に、最も大切なポイントとしてケアの心です。その人だけに与えられた独自の人格、尊厳性をもつ“その人らしさ”をケアする心です。私たちの都合や事業所の立場から認知症の人へのケアを進めてしまうことは、効率を重視する現場で起こりやすいことです。しかし、ケアを受ける人は、ケアをする人の考え方や行動によって人生が変わるのです。目に見えないところが実は一番大切なところですが、これに気づく感性をもって日々のケアに努力してください。

 認知症ケアの心、知識そして技法をもった専門職のあなたが、あなたらしさをもって日々進化していくことが期待されます。公認された資格試験による専門性ではなく、介護職の方が自分はこうありたいと願う専門性こそが重要です。

 高い志をもって、大きくそして豊かに育っていかれることを念願いたします。

長谷川和夫
1969年 東京慈恵会医科大学教授、73年 聖マリアンナ医科大学神経精神科教授、93年 同大学長、2002年 同大学理事長、05年 同大学名誉教授。01年 認知症介護研究・研修東京センター長を経て、現在、同名誉センター長。医学博士。『認知症を正しく理解するために』(マイライフ社)『認知症知りたいことガイドブック』(中央法規出版)など著書・論文多数。

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