認知症いろいろ たしかめてください、患者さんの「認知機能」

Dementia Support 2011 Summer

認知症の人を支援するケアマネジメント

高齢者の暮らしを地域の社会資源を活用し支える

援助経過(1/2)
1頻回な電話と強固な抵抗

 Aさんは2007年ころより記憶の減退が著しくなり、利用している介護サービスについてもすぐに忘れてしまい、時間や予定がわからなくなっていた。

 「誰も家に来てくれへん! 独居老人が一人で生活してんねんから、なんとかしたげようっていうのが人間というもんやで。もう3日もご飯食べてないねん。そやけどあんたには、その気持ちはなかなかわからんと思うで」

 このような電話を、担当ケアマネジャーに1日20〜30回もかけたり、当該区役所や府の介護保険課に介護サービス事業者への苦情電話を繰り返していた。また、08年1月に大腿骨頸部を骨折したが、骨折したことを忘れ、歩こうとして転倒を繰り返していた。そのたびに救急車を呼ぶが、医師への暴言などにより病院からも拒否され、本人はさらに混乱し、何度も119番通報するといった状態であった。

 08年12月、担当ケアマネジャーから当事業所へ相談が寄せられた。

 「小規模多機能型居宅介護サービスにより、なじみの関係の中で暮らしの支援を受ければ、Aさんの不安感が軽減し、落ち着いてくるのではないかと思うので、関わってもらえないか」

 その後、何度か一緒にAさん宅を訪問し、09年2月から小規模多機能サービスの利用が始まる。

 担当ケアマネジャーは訪問看護ステーションの所長でもあり、Aさんが悪態をつきながらも自分に関わってくれる人として信頼していることがよくわかっていたので、主治医とともに引き続き訪問看護で関わってもらうことにした。こうして、主治医、訪問看護師、福祉用具貸与事業所、当事業所スタッフらの、二人三脚ならぬ数人数脚でAさんへの暮らしの支援が始まる。

 Aさんは、少しの環境の変化にも混乱した。利用に際し、支援するスタッフや通ってきてもらう施設のことを何度も丁寧に説明するが、そのときは「あ、そうか」とわかっても、数分後には「あんた誰や、なんでそんなとこ行かなあかんねん!」と拒否した。そのため、1日に何度も迎えのスタッフが通ったり、朝・昼・夕の暮らしを支援するために、「通い」から「訪問」にその日のサービス計画を変更したりの日々が続いた。また、Aさんから当事業所への電話が日に数十回もあり、電話回線がパンク状態になったため、Aさん専用の電話を設置する。

2小規模多機能ホームで次第に支援を受容

 「そんなとこ行かへんよ!」、「買い物に行ってくれへん! ご飯、何日も食べてへん!」と声を上げるAさん。

 そうかと思うと、一転してこう言う。「ありがとう。今日は楽しかったわ」、「ようしてもうて、ありがとう」。

 クルクル変わる言動に翻弄されながら、どうすればAさんが落ち着いて暮らせるようになるのか、スタッフ全員で「ケースカンファレンス」を繰り返した。センター方式のシートを活用して、Aさんの不安、寂しさ、混乱の背景にある、思いや願いを探る中で、それが少しずつみえてきた。

 「私がやってほしいことを、やってほしいときにしてほしい。何かあったらすぐに駆けつけてほしい」

 「住み慣れた家で、自分らしく暮らしたい。人にとやかく強制されたくない」

 こうした本人の気持ちを尊重しながら、日々のサービス計画をその日のAさんの様子に合わせながら支援をしていった。

 半年ほど経つと、ようやくホームに通ってくることが日課となり、通いのない日曜日も、朝・昼・夕に訪問することを納得してもらえるようになった。ただ電話は続いた。

 朝5時「いつ来てくれんの?」、午前10時「いつ迎えに来てくれんの?」、午後3時「今日のご飯の買い物に行かなあかんけど、私、どうしたらええんやろ?」、午後6時「だれも来てくれへん。ご飯食べてないけど、いつ来てくれんの!」

 その後も夜9時過ぎまで電話がかかり、それは365日変わらぬAさんとの決まりごとであった。

 やがて、普段の入浴は拒否しても、訪問看護ステーションに協力してもらって入浴ができたり、元来がお洒落なAさんなので白髪が伸びてきて、染髪の誘いをすれば、「そやな、ほな染めるわ。服も脱がなあかんかな?」と、そのままお風呂に入ってくれたりするようになった。

 介護スタッフは、「なんでこんなにAさんに振り回されるのかしら」といった会話から、「介護の主体は私たちではなく、Aさんなんだという視点に立てば、振り回されることができる私たちがいる、ということも考えられるよね」という会話ができるまでになっていく。

「Dementia Support 2011 Summer」へ

ページトップへ

高齢者の暮らしを地域の社会資源を活用し支えるページをご覧の皆様へ

エーザイのアルツハイマー型、レビー小体型認知症治療薬「アリセプト」のサイトです。
アルツハイマー型、レビー小体型認知症の患者様とそのご家族を支え、コミュニケーションをサポートするツールも掲載しています。