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Dementia Support 2011 Summer

Dementia Today

『食べられなくなったらどうしますか 本人と家族のための意思決定プロセスノート(試作版)』の紹介

『食べられなくなったらどうしますか 本人と家族のための意思決定プロセスノート(試作版)』

  • 東京大学大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター特任教授 清水哲郎
  • 東京大学大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター特任研究員 会田薫子

水分と栄養は人が生きていくうえで欠かせないものだ。しかし、病気や事故で口から摂ることが困難になってしまった人もいる。しかもそのときに、高度の認知症の人のように、本人が意思決定を行うのが難しく、どのようにして欲しいかが伝えられないこともある。2011年2月に開かれた日本老年医学会のシンポジウムでは、そうした場合に備えて、本人の意思を尊重するためにつくられた『食べられなくなったらどうしますか 本人と家族のための意思決定プロセスノート(試作版)』(以下、『意思決定プロセスノート』)が紹介された。著者の清水氏と会田氏にノートについて伺った。

 会田氏は、10年以上にわたり食べられなくなってきた人への臨床現場の対応を調査してきた。その中で医師が最も多く行うのが「胃ろう造設術(胃に小さい孔を開けて体外から管を通し直接胃に水分、栄養や薬を注入する方法。その孔を造る手術)」だという。患者さんへの負担が少ないと、勧められることが多い。本人も家族も主治医から説明されると、それに同意することがほとんどだとわかった。

 しかし、実際には鼻から胃にチューブを通す「経鼻経管栄養法」など、栄養補給にはほかの選択肢もある。ときには長期間のケアを前提とする胃ろうが、ベストとはいえないケースもある。「選択肢が複数あり、それを選択するのは本人であること。このことを患者さんと家族に知っていただき、そのための知識をもっていただきたい。そうした思いからこのノートを考えました」。こう会田氏は語る。

 『意思決定プロセスノート』は、清水・会田両氏の執筆で2部構成になっている。第1部には水分・栄養を摂るための種類と方法について説明し、本人の意向を尋ねるまでの6つのステップが掲載されている。第2部では医療・介護者向けの解説として、意思決定のための説明と同意、医療・介護従事者の倫理について解説している。

 「医療の提供は、医療者だけが決めても患者さんだけの意見で決定されても、望ましい方向に向かうとはいえないでしょう。医療者と患者さんとが一緒になって意思決定プロセスを考えていかなければならないのです。そのために、医療者は患者さんが考えていることを理解しようとしなければならない。その“やり取りをする道具”としてこのノートはその役に立つと思います」と、『意思決定プロセスノート』のもう一つの意義について清水氏は述べる。

本人の意思を伝える

 患者本人は、口から食べられなくなったときに、「自分がどうありたいのか」をこのノートに書き込めるようになっている。

 注目したいのは、「本人の生き方、価値観、人がら」について書き込める欄がつくられていることだ。食生活だけではなく、「食」に対する価値観を、本人が人生の中でどのようにもってきたのか。美食家だったのか。あるいは、食事よりも大切にしていることがあったのか。それが明らかになれば、「食」を今後の人生でどのように位置付けることが望ましいのか、ノートを見た人はわかるようになるのではないだろうか。さらに、本人が人生を選択する以上、医療処置に対して、「何もしないでほしい」という選択肢も考えられる。

 認知症の人を支援するためには、本人の人生をみていかなければならない。胃ろうも、本人の人生を豊かなものにする手段として造られるべきだろう。『意思プロセスノート』を活用することで、「本人の意思」がきちんと伝えられるようになれば、認知症の人自身の望むケアに一歩近づくのではないだろうか。

(図)情報共有から合意へ

「biological」は、身体に注目するときにみている「生物学的生命」で、「biographical」は、人として生きるあり方に注目するときにみている「物語られるいのち」のことを示す。
(出所:『食べられなくなったらどうしますか 本人と家族のための意思決定プロセスノート(試作版)』p50)

ノートについてのお問い合わせ:
「意思決定プロセスノート」窓口
e-mail : clinical.ethics.jp@gmail.com

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