認知症いろいろ たしかめてください、患者さんの「認知機能」

Dementia Support 2011 Summer

Dementia Today

症候学は認知症の医療とケアにどのように生かせるか

滋賀県立成人病センター老年内科診療部長・松田 実氏座長の鈴鹿医療科学大学特任教授/三重大学名誉教授・葛原茂樹氏

2011年6月15日から17日の3日間、「活力ある長寿社会をめざして」と題し、日本老年学会が東京で開催された(合同開催:日本老年医学会、日本老年精神医学会、日本老年社会科学会、日本基礎老化学会、日本老年歯科医学会、日本ケアマネジメント学会、日本老年看護学会)。16日の日本老年医学会イブニングセミナーでは、滋賀県立成人病センターの松田 実氏が「認知症の症候学」について講演した。

 症候学とは医学の一分野で、患者からの訴えや診察からわかることを定義・分類して意味付けを与える方法論をいう。病気の変化や進行によって、患者の心身にどのような症状が表れているのか、どのようにして起こるのかを分析する。有効な治療やケアを行うときの基本といえる。

 認知症診断は、「問診、診察、行動観察(症候学)」「画像診断など臨床検査」「認知機能検査(MMSEや時計描写など神経心理学的検査)」の3本柱から行う。「単に認知症と伝えるだけでは、診断にならない。それがどのような疾患なのかを的確に診断しなければなりません。診療の目標は、画像や検査の点数の改善ではなく、症候の改善であるべき」と、松田氏は述べる。例えば症候学的に捉えれば、患者が「取り繕い反応」や「振り返り徴候」をする行動から“アルツハイマー病らしさ”がうかがえ、また、「わが道をゆく的な行動」が“ピック病らしさ”を表すというように、症状から病気が見えてくる。

 診察の際に、問診する場合でも記憶がどのように障害されているかは、疾患によって異なることを考えるべきだという。

感情の安定がポイント

 松田氏は認知症について、押さえておきたい基本的事項として、次の4点を述べた。

  1. 1. 認知症は生活習慣病ではない。認知症の中で最も多いアルツハイマー病は、原因がまだ明らかではなく予防ができない。
  2. 2. 人は、感情(情)が認知(知)のベースにある。だから認知症の人も感情が安定すれば認知機能は崩れない。感情が安定していればBPSDは起こらない。
  3. 3. 人は人との関わりの中でしか生きられない。人が幸せと感じるのは、人から「愛されること」「感謝されること」「役に立つこと」「必要とされること」の四つ。認知症になると、これらを得られなくなってしまう環境に追い込まれる。「あなたと一緒にいてよかった」と認知症の人に伝えることで、幸福感を感じてもらえるのではないか。
  4. 4. 認知症の人は自身をうまく表現できない。思いがあっても言葉での表現が下手になる。認知症の人の思いに添った対応をするためには、認知症の人の思いを推測する必要がある。

 松田氏は「認知症の治療やケアでは、認知症の症候を理解したうえで、本人の立場になって考えることが重要だ」と述べる。

 BPSDの対応について、脳の障害から生じている仕方のない症状もあれば、環境的要因の強い症状もある。不安や喪失感が根底にあることも多い。また、身体疾患が原因の場合もあれば、薬が原因の場合もあるという。「一つひとつの症状の原因を考えることが、対応につながる道だ」と松田氏は説いた。

 学会では、このほかにも「認知症診療の実践セミナー」(日本老年精神医学会)、「アルツハイマー病治療の現況と将来の展望について」(日本老年医学会)など、認知症についての多くのセミナーが開催された。

(図)認知症の診断の3本柱

(表)認知症の進行と心理状態の変化

出所:図表共に松田 実氏の講演スライドより

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