認知症いろいろ たしかめてください、患者さんの「認知機能」

Dementia Support 2012 Winter

認知症ケアの今日、明日

街に出るデイケアで個人の生き方や歴史を尊重したケアを実践

医療法人ハートピア細見クリニック認知症デイケア「かなりあ」(宮崎県宮崎市)

宮崎市の中心部、市役所正面に位置する細見クリニック。従来の考えとは異なり、交通の便の良い街中で、地域に「開かれた」精神科医療を行う施設を目指し2002年に開院した。細見 潤院長は認知症患者の治療・生活支援を行う中で、患者一人ひとりの生き方や生活背景、価値観を尊重した個別ケアを実践している。

「街のオアシス」で心のバリアフリー

 細見クリニックからすぐ近くにあるレトロ調の画廊喫茶「シベール」。マスターの池 英寿氏によると、店名は1963年に日本で公開されたフランス映画の名作「シベールの日曜日」から名付けられた。この映画では戦争で障害を抱え記憶を失った中年男性と、12歳の少女のふれあいが温かく描かれている。地域社会で認知症の人と健常者の交流の「場」を支援するこの喫茶店にとって、象徴的なネーミングといえよう。

 「シベール」には宮崎在住のアーチストや文化人らが常連客として集まってくる。地元の芸術やカルチャーの情報発信基地のような店だ。ここで細見クリニックが1年半前から始めた認知症デイケア「街のオアシス」には、これらの人たちがボランティアとして多数参加している。

「シベール」でのデイケア風景。店内に歌声が満ちる

ボランティアが浪曲を披露

利用者の人たちの笑顔が弾ける

 毎月1回、デイケアを利用するお年寄りとスタッフが連れ立って「シベール」に出向き、約1時間にわたって楽器の生演奏や歌やマジックなどの催しを楽しむ。今回で14回目、参加した約20名のデイケア利用者とOT(作業療法士)やPSW(精神保健福祉士)などのデイケア・スタッフはテーブル席にいるが、「シベール」の常連客も次々と入ってきて、カウンター席に着き共に楽しく過ごす。ここには認知症患者と健常者のふれあうスペースが、ごく自然な形でつくり出されているのが印象的だ。地域社会の協力による、心のバリアフリーの具現化といえるのかもしれない。

 この日の「街のオアシス」は3名のボランティアによる楽器演奏に合わせて、唱歌「隣組」と「もみじ」の合唱から始まった。いずれもデイケアに通う高齢者が戦中・戦後の混乱期に慣れ親しんだお馴染みのメロディばかりで、ノスタルジアを感じさせる絶妙の選曲だ。

 続いて男性患者のAさんが流暢な英語で、臨場感たっぷりに映画主題歌「慕情」を歌い上げると、店内は拍手が鳴り止まない。和やかな雰囲気の中、コーヒーとお菓子がそれぞれの席に運ばれてきた。

利用者の1人も、得意の読み聞かせを披露する

民話の紙芝居には、皆が強い興味を示す

お店の人と利用者とのふれあいが、ごく自然に創りだされている

 芸達者なボランティアが絵本の読み聞かせや手品などを順次披露し、その後、ボランティアのBさんが、「瞼の母」を見事に熱唱。プログラムが進行する中、デイケア利用者である高齢者、デイケアのスタッフ、ボランティア、そして一般のお客さんとの境界はなくなり、参加者の渾然一体となった歓声と笑顔が弾ける。プログラムは毎回変わり、これまでにフラダンスや浪曲、尺八演奏なども行ってきたが、細見 潤院長が得意のエレキギターを披露したときには、特に盛況だったという。

 デイケア・スタッフの看護師・冨田ひとみさんは、「施設内のデイケアでは参加意識が乏しかった認知症の患者さんも、ここに来ると積極的に自分の好きな歌を歌い、一芸を披露してくれたりします。回を重ねるうちに患者さんも慣れ親しみ、次回を待ち遠しく感じるようになり、終わってからクリニックに戻ってくると、表情が明るくなっていることも多いのです」と目を輝かせる。

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