認知症いろいろ たしかめてください、患者さんの「認知機能」

Dementia Support 2012 Winter

認知症ケアの今日、明日

街に出るデイケアで個人の生き方や歴史を尊重したケアを実践

アディクションと認知症を二本の柱に船出

 医療法人ハートピア細見クリニック理事長・院長の細見 潤氏は、宮崎県精神保健福祉センター所長を14年間務めた後、2002年に現在地で同クリニックを開業した。細見氏は当時を振り返る。

 「県の精神保健福祉センターの所長を務めていたときに、実地指導や病状審査のためにあちこちの精神科病院を回りました。そこで、認知症の入院患者さんを数多く見てきました。当時は認知症の治療法やケアが十分に確立されてはおらず、BPSDがある患者さんを保護的に入院させているだけで、然るべき治療やケアが行われていませんでした。寒々とした病室で、空虚に天井を眺めている方もおられ、接する私自身も非常に空しさを感じました。そうした経験から認知症のケアは医療者側の対応の仕方によって、随分と変わってくることが感覚的に理解できたのです」

 制約の多い公的医療機関の仕事に限界を感じていた細見氏は、理想とする精神科医療の実現を目指し開業を決意する。宮崎市では当時既に、地域保健医療計画の病床規制で新たに病院が造れない環境にあったため、必然的に小規模診療所でのスタートとなった。

 細見氏は精神保健福祉センター所長時代から、アルコール中毒や過食・摂食・拒食障害、薬物・ギャンブル・買い物依存、リストカット等のアディクション(嗜癖(しへき)・依存症)の治療やカウンセリングに尽力し関心も高かった。

県の重要文化財の「民家園」でのガーデニング

 もう一つの関心は認知症についてだ。「私自身、それまでに認知症の治療やケアに本格的に取り組んだ経験はなかったのですが、既存の発想には捉われないケアを提供することによって、従来とは全く異なる治療効果が期待できるのではないかと感じていました。高齢化の進展で今後、認知症患者が急増することはわかっていたので、医療機関の自己完結的な取り組みだけでは無理で、コミュニティの中で認知症患者さんが安心して暮らしていける仕組みを、地域ぐるみで進めていくことが重要と考えました」と細見氏は話す。こうしたことから、アディクションと認知症を診療の二本柱とすることに躊躇はなかった。02年当時の精神科医療は統合失調症やうつ病治療等が主流で、アディクションや認知症治療に注力する民間医療施設はほとんどなかったという。

 細見氏は認知症デイケアのサービスの場を施設内だけでなく、利用者の施設外での活動を積極的に行い、地域社会やそこで生活を営む人達との交流を深めていくことにした。基本的な目的はノーマライゼーションの場づくりだ。

 「これまでに陶芸の一環として作った器を窯元で焼いてもらったり、ダンスホールを借りてモダンダンスなどもやりましたが、単発開催で定着はしなかったのです。その中で数年前から宮崎県総合博物館と関わりができて、同館敷地内にある県の重要文化財・民家園の農園でガーデニングをやるようになったのですが、これは利用者に人気で、ずっと継続しています」(細見氏)

 農作業は天気の良い日に不定期に行われるが、利用者は若かったころを思い出すかのように生き生きと、手馴れた様子で畑に向かう。そして時期が来ると季節の野菜をたっぷりと収穫する。

 「スタッフも施設内だけの閉鎖的な環境で仕事をしているより、外に出て利用者と共に地域の色んな人たちと交わる中で、複眼的な物の見方ができるようになり、それが認知症のケアにも非常に有益だと感じるのです。今後もさまざまな場所にデイケアのチャンネルを拡げて、“街のオアシス”や民家園の農作業以外にも、活動を企画し実践していきたい」と細見氏は意欲的だ。

参加者全員で農作業をスタート

季節の野菜をたっぷりと収穫

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