認知症いろいろ たしかめてください、患者さんの「認知機能」

Dementia Support 2012 Winter

センター方式で互いの可能性をひらく(8)

震災後、ケアの原点に立ち戻り、本人の声を聴くことから始めた

役割を増やし、本人らしさを支える

 「何もすることがないのがつらい」と言っていた女性Aさん。以前は、掃除やご飯作り、洗濯物干しなどを自ら進んでやっていた。震災後は本人の負担になってはと職員が全部引き受けていたが、この言葉を聴いてから、Aさんに少しずつ分担してもらうことにした。

 まず自分の身辺の片付けから、食べた茶碗を下げてもらい、布団を準備してもらう。それから掃除や調理の手伝いなど、ゆるやかに役割を増やしていった。

 C-1-2シートにはAさんのこんな言葉がある。「髪がぼさぼさになっていやだ」。テレビの取材が入ったときは「こんな髪では映るの嫌だよ」と隠れている。夫の仕事柄、人がよく出入りし、いつも身だしなみには気を配っていたという。髪をきれいにしたい、その願いを叶えようと、蓬田さんはAさんと美容院に行った。そこは認知症に理解のある店だった。

 髪染めについて、シートから本人の力として、色がたくさんあると選べないことがわかった。そこで店には、「三つぐらいなら選べるから、用意をお願い」と伝えた。周りで決めてしまうのではなく、できるだけ本人の意思を引き出してほしいと思ったからだ。予めAさんの好みも聞いておき、当日二つの色が差し出された。するとAさんは「この中間がいい」と応えた。「そしたら混ぜましょう」ということになった。Aさんのこだわりには皆が驚いた。

 また、Aさんは花が好きで「花があるとやっぱりいいね」という言葉がシートに記されている。津波の前の生活でも自宅から鉢植えをもってきて水遣りを日課にしていた。そこで美容院からの帰りに花屋に寄り好きな花を買い、また寿司屋にも寄って大好物の寿司を味わった。美容院でお化粧をしてもらい、Aさんには心弾む外出となった。

 Aさんは役割が次第に増えていって、髪染めや外出・外食と願いが叶って、表情も変わっていった。冗談を言うようになり、職員を気遣う言葉も出てくるようになった。「ちゃんと食べたの」「何かやることあったら手伝うよ」。

 「Aさんはかなり活動的になって、自分のペースで生活できるようになりました。ありのままの声を聞くことで、本人の思いや願い、力を知って、それを一つひとつゆるやかに実現していったことが、本人らしさを引き出すことにつながっていったのです」

AさんのC-1-2私の姿と気持ちシート。津波の襲来、避難所生活と環境が激変するなか、利用者のありのままの声に今一度耳を傾け、その人らしい暮らしの支援をしようと、4月、11人全員にセンター方式を使いアセスメントした。これは震災後、元気をなくし「何もすることがなくてつらい」とつぶやいたAさんのシート。「髪がぼさぼさになって」「たまに寿司もいいね」「花あるとやっぱりいいね」などの言葉から、Aさんの本当の思いや願いが伺える。

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