認知症いろいろ たしかめてください、患者さんの「認知機能」

Dementia Support 2012 Winter

センター方式で互いの可能性をひらく(8)

震災後、ケアの原点に立ち戻り、本人の声を聴くことから始めた

新生活が始まる「今できることは今支えよう」

 2011年夏、グループホームは仮設住宅に移った。仙台市太白区、JR長町駅の近くで、マンションや戸建てが点在する、のどかな郊外住宅地といった場所。近くには230戸の一般仮設住宅もある。ホームは2棟が向かい合って建ち、それぞれ個室9室がある。蓬田さんとグループホーム利用者の人たちは、8月5日の引越しを前に見学に来ている。そうしたこともあって、転居後はリロケーションダメージで混乱を起こすこともなく、「静かでいいね」と好評のようだ。

 仮設の周りには空地があって、蓬田さんは迷わずそこに畑を作った。以前の場所にも畑があり、地域の人がハウスを造ってレタスを植えてくれたりした。畑は地域とのつながりを媒介する大切な社会資源、と蓬田さんは考えている。畑の半分は一般仮設の人たちにも貸し、交流を進めている。毎日来て畑作りを生きがいにしている人もいる。お年寄りにとって、土と触れ合うことは心の緩和につながり、芽を出し成長していく過程を見ることは大きな喜びになる。「畑のもう一つの効用です」と蓬田さんは話す。

 秋が深まり、畑には大根、ナス、青梗菜、ネギが育っている。「皆でそれを取ってきては、『今日の献立、何を作ろうか』と相談したり。そういう1日の暮らしの流れが、仮設でもできつつあります。そこに一人ひとりのやりたいことも入れられればいいです」と言う。

仮設住宅にあるグループホーム。ホームの前には畑が作られている。ここにはほかの仮設に住まう住民も訪れる

 スタッフは、最近になって再び、D-1、D-2、C-1-2シートを使ったアセスメントを始めている。

 「仮設に移って力を発揮できる状況になってきたので、もっと違うやりたいことや希望があるのではないかと。それと今回の震災を経験して、命はいつ終わるかわからない、だから今できることは先延ばししないで、今支えていこうと思ったんです」

 まだ仮設住宅に移る前の昨春、避難先近くの桜並木へ皆でお花見に出かけたときのこと。満開の桜に皆が見とれていたところ、ある利用者が「あっ、ツクシだ」と道端にかがんだ。

 「私たちは命を守るとか、光を浴びてもらうとか、目的だけに目がいって、きゅうきゅうとしていた。利用者は、本当の心のゆとり、たくましさがあるから、小さな道端のツクシに気付くんですね。その力ってすごいなと思いました。ツクシをおひたしにしようか、天ぷらにしようかと、大事に離さないで持ち帰りました。自然によって傷付いたけれど、自然によってまた癒される。大切なことを教わりました」

 なつぎ埜の人たちは、再びしっかり歩みを始めている。

※本事例掲載にあたり、個人情報が特定されない旨等を家族に説明し、同意を得ています。

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