認知症いろいろ たしかめてください、患者さんの「認知機能」

Dementia Support 2012 Winter

マインドマップを活用した

「見える事例検討会」がスタート

「マインドマップ®」とは、企業や教育界で注目を集めている自然な形で脳の力を引き出す思考技術のこと。横浜市金沢区で3年前から行われている事例検討会ではこれを議論のツールとして応用しはじめた。これまでにないさまざまな効果が得られていることから、新たに「見える事例検討会」を発足。全国各地での開催も展開しはじめている。

(マインドマップ®は英国Think Buzan Ltd.の登録商標です)

脳の中を“見える化”するマインドマップ

 「マインドマップ」とはどんなものなのだろうか。マインドマップの公認インストラクターの資格をもつ鈴木孝枝氏は「一言でいえば、思考を“見える化”するツール」と説明する。

 マインドマップは、イギリスの教育者トニー・ブザンによって開発された。彼は、レオナルド・ダ・ヴィンチやアルバート・アインシュタインといった天才たちの著書やノートを研究していくうちに、落書きのように書きとめている人が多いことに気付く。それをヒントにつくり出したのがマインドマップである。

 その最大の特徴は、真ん中に絵や言葉を置き、そこから何本かの枝(ブランチ)を放射線状に伸ばしていくことにある。枝はさらに枝分かれさせることができる。ただし、枝はすべて曲線で、一本一本に言葉や絵などを添えていくのが決まりだ。また、カラフルな色を使って枝を描いていくのもマインドマップ特有のやり方だ。枝は何本伸ばしても構わない。頭に浮かんだことを連想ゲームのように、次々に加えていけばよい。

 「1、2、3、5という数字が並んでいたら4という数字を入れたくなるように、人の脳は欠けているところを見つけるとドキドキして埋めたくなる性質をもっています。また、一つの質問を投げ掛けられると、何かしらの答えを探してしまう、そんな脳の性質に基づいているのがマインドマップです。マップを描いているといつのまにか、枝が四方八方にどんどん伸びていきます」(鈴木氏)

 出来上がったマップの形は、脳内でシナプスが伸びている様子を思わせる。そのせいか脳が自然に反応し、理解力や記憶力、発想力などさまざまな脳力が引き出せるのだという。

 「マインドマップは何にでも使うことができます。イギリスやシンガポールでは学校教育に導入されていますし、マイクロソフトの共同創業者ビル・ゲイツや米国元副大統領アル・ゴアといった著名人も使っています。また、IBM、BMW、ボーイング社など多くの国際企業も研修会や会議などさまざまなシーンで取り入れています」(鈴木氏)

 日本にも2005年ころ紹介され、主に企業に広がっていった。そこに新しい分野で活用しようという動きが出てきた。それが医療やケアの分野で、中でも最も積極的に活動しはじめたグループが、「見える事例検討会」である。同検討会の中心メンバーの一人で、医師の八森 淳氏はマインドマップを導入しようと思ったきっかけを次のように話す。

 「以前、複雑なものを扱うのにマインドマップがいいという話をどこかで耳にして、本だけは買っていました。あるとき知り合いから誘われて、その勉強会に参加しました。学んでいくうちに、マインドマップは、複雑で多様な情報や課題を扱う事例検討のツールとして最適ではないかと考えるようになったのです」

 八森氏は3年前から横浜市金沢区で認知症サポート医の河本クリニック河本和行氏が主催する多職種による事例検討会で中心的役割を担ってきた。事例検討では、対象者に関するさまざまな情報が必要だが、その情報はプロフィール、病気、認知機能、ADL、制度、経済状況、住環境、介護の状況、家族状況、地域との関係、対象者や家族の思いなど多岐にわたる。しかも、それぞれが単独で存在するのではなく、互いに複雑に絡み合っている。それを整理し、読み解いていくと、困難事例の対策が見えてくるが、肝心な情報の整理がなかなかうまくいかないと感じていた。

 八森氏は事例の情報を、マインドマップを用いて整理してみた。すると、想像以上に情報が簡単に系統だって整理されていくことがわかった。しかも、情報間の関連性がつかみやすい。早速、八森氏は同検討会のメンバーの一人である大友路子氏にマインドマップの活用を提案した。

 大友氏はそのときのことを「最初は、八森先生が何を言っているのかさっぱりわかりませんでした」と笑いながら振り返る。

八森 淳(はちもり・あつし)

公益社団法人地域医療振興協会市立伊東市民病院臨床研修センター長・医師

大友路子(おおとも・みちこ)

社会福祉法人恩賜財団神奈川県済生会横浜市六浦地域ケアプラザ地域包括支援センター・社会福祉士

鈴木孝枝(すずき・たかえ)

Office Suzuki Takae代表。ブザン公認マインドマップインストラクター

 その後、八森氏と大友氏は、より使いやすくするために、数ヵ月かけて事例検討用のマインドマップのテンプレート(ひな形)をつくり上げ、金沢区で事例を積み上げた。昨年8月3日、そのテンプレートを用いた第1回「見える事例検討会」を開催。実際にやってみて、さまざまな効果が得られることがわかった。

見える事例マッピングの特徴
  1. 1.放射思考になっている
  2. 2.中心が常に明確で、検討項目がぶれない
  3. 3.自分が好きなところから見はじめられる
  4. 4.知らず知らずのうちに疑問や意見が出てくる
  5. 5.話の内容が飛んでも、整理ができる
  6. 6.議論している部分が全体のどこなのかがわかりやすい
  7. 7.文字量が少ないのでたくさん見なくてもすむ
  8. 8.キーワードにより情報がつながって状況が見えてくる
  9. 9.課題の関連性がストーリー化して見えてくる
  10. 10.解決の糸口が視覚化されて見え、イメージできる
  11. 11.皆が同じものを見て議論できるので一体感が生まれる
  12. 12.興味をもって参加でき、もう一度やりたくなる

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