認知症いろいろ たしかめてください、患者さんの「認知機能」

Dementia Support 2012 Winter

認知症の人を支援するケアマネジメント

がん疾病を抱えるグループホーム利用者を医療との連携で支える

考察

 Aさんは、今でも突如として入居者に物を投げるなどの不穏な状態になることもあるが、確実な服薬管理や本人の心理的ニーズを満たすことで、ある程度安定した生活を過ごすようになっている。

 しかし、皮膚がんがあるAさんには、医療的ケアが今後さらに必要になることが予想される。これからの症状の進行に伴い、現在の病院、在宅療養支援診療所や訪問看護などを活用して、グループホーム職員と共にチーム連携を図っていくことが欠かせない。それによって、最終的には住み慣れたグループホーム内で看取りケアまで行っていきたいと考えている。

 2012年4月から、定時巡回・随時対応訪問介護・看護サービスが施行されることは、在宅療養をする人にとって、医療処置や介護が本人の必要とする時間帯に受けられるという大きなメリットがある。しかし、認知症の人の場合、その関わり方は、一時的なものでは把握することが困難なため、継続して支援経過を把握していくケアが必要となる。

 認知症の人の場合、いつ不穏な状態になるかは予測不可能である。そのため、常に見守る職員が傍にいるというグループホームは、認知症の人、とりわけBPSDの顕著な人を支援していく生活の場として今後も重要な役割が期待される。

事例解説

桜美林大学大学院教授 白澤 政和

 認知症に加え皮膚がんという病気をもち、グループホームに入居しているAさんの事例である。Aさんには親族がおらず、グループホームでは、できるだけ長くホームで支えていきたいと考えている。

 皮膚がんについては、本人の意向で認知症と診断される以前に、手術を拒否するということで、痛みを緩和するのみで処置をしてきた経緯がある。

1BPSDへの医療とケアの両面からの対応

 本事例では、BPSDに対してケアと医療の両面で支援している。BPSDとしては妄想があるが、これについては、スタッフが本人の思いを傾聴するなどして対応している。ただし、そうしたケアのみでは妄想に十分対応できないときには、一時的に抗不安薬を服用している。

 このように医療とケアの両面の対応をすることは重要であるが、やむを得ず服用しなければならない場合にあっては、薬の副作用について職員も理解をし、医師との密接な連携をとりながら対応していくことが重要である。抗不安薬の場合には、ふらつきや認知機能の障害といった副作用があるとされている。そういうことを確認し、同時にAさんの病態を常に理解しながら、医師に対し本人の状態について頻繁に連絡をとることが不可欠である。

 妄想というBPSDに対するケアについては、傾聴といった対応をしているが、基本的には本人の気持ちを理解しようとする態度・行為が必要である。妄想で表現される言葉には、本人が気になっていたり、抑えてきた感情が表現されているという視点で、職員は利用者に接することになる。本事例の場合には、それが傾聴といった態度で接している。

2皮膚がんへの関わり

 Aさんは、認知症以外に皮膚がんを患っているが、手術を望まずに治療を続けている。グループホームでは、医師との連携のもとで痛みに対応していくかたちの処置がなされている。認知症の人たちは、認知症だけでなく、ほかの病気を患っている場合が多い。そのため、認知症の人のケアには、医療との連携が欠かせないことを理解しておく必要がある。特に、Aさんのようにがんなど進行性のある疾病である場合には、より緊密な連携で医療と対応していかなければならない。

 認知症の治療とがんの治療を別の医師で実施するのか、あるいは同じ医師ですべてを理解をしてもらいながら実施するのかについては、検討されなければならない課題である。本事例の場合は、一つの病院内で医師は異なるものの、認知症と皮膚がんのそれぞれ専門医が対応しており、両方の医師が連携を保っているが、時には、医師同士の連携・連絡体制をどうするかなども含めながら支援していくことが求められてくる。

3帰宅願望への対応

 施設やグループホームなどに入居した人たちの多くは、当初、帰宅願望が極めて強い。ときにはこれを徘徊と呼んで対応する施設もある。認知症の人が取るこうした行動について、ケアを行う立場のスタッフは往々にしてBPSDの症状として捉え対処しようとしがちである。しかし、住み慣れた地域を離れて施設に入居してきた場合、本人の思いや不安が帰宅願望となることは当然の気持ちであり、帰宅願望というニーズに介護者側がどう応えていくのかが重要である。本事例の場合は、スタッフが同行して自宅に一度帰ってみるという支援をしている。こうしたことも一つの支援の仕方であろう。

 一方、遠方から入居しているような場合には、こうした対応をするのはなかなか難しい。こうした帰宅願望に対しては、家に帰りたいという気持ちを抑えるのではなく、本人のそういう気持ちを受け入れて応えようとする対応、例えば本人の傍にいて言葉を傾聴するとか、あるいは少し一緒に外に散歩に出てみるといった、本人の思いに添う支援が重要である。

※本文中の事例は、本人のプライバシー保護を考慮し、内容を変更しています。

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