認知症いろいろ たしかめてください、患者さんの「認知機能」

Dementia Support 2012 Winter

Dementia Today

第30回 日本認知症学会学術集会 超高齢社会を医学・医療がどのように支えるか

シンポジウム6「認知症に対する精神科的アプローチ」の登壇者

2011年11月11日から13日の3日間、第30回日本認知症学会学術集会が、東京の船堀で開催された。学術集会会長は東京大学大学院教授の大内尉義氏が務めた。ランチョンセミナーでは、筑波大学教授の朝田 隆氏による「動画で見るアルツハイマー病の生活障害」をはじめ認知症治療に関するさまざまな講演があった。

学会を活発な討論を行う場に

 今回30回を迎えた学術集会のメインテーマは「超高齢社会における認知症の研究・診療への挑戦」。大内大会長は、「基礎・疫学・臨床研究から診療現場や地域医療における実践まで話題をバランスよく盛り込むことを心掛けた。わが国の医療・医学が、豊かな社会の在り方をどのように追求していくか、幅広い内容の発表が期待される。また、新しい試みとして、シンポジウムの一部にテーマに沿った演題の公募を行った。さらに、認知症の最新基礎研究について少人数でディスカッションをする企画を設けた。ぜひ、本学会が活発な討論の場となるように期待したい」と述べた。

 11日に開かれたシンポジウム2「J-ADNIの現況」では、日本で初の大規模なアルツハイマー病の疫学調査・研究であるJ-ADNIについて、最新の報告があった。ADNIは、米国をはじめとする世界数ヵ国で行われているアルツハイマー病の大規模な調査・研究を行うプロジェクトだ。治療薬開発に欠かせない病気の進行過程を忠実に示す客観的な評価法の確立を目的に進められている。客観的評価法が定まれば、将来、アルツハイマー病の早期診断、予防、治療薬の開発につながる。現行のJ-ADNIは2013(平成25)年度末に完了する見込みだが、今後は「脳イメージング技術開発」「IT」「超早期AD」などに焦点をしぼり、「J-ADNI II」のような形でさらにプロジェクトを発展させる計画だという。

日本認知症学会学術集会会長の東京大学大学院教授・大内尉義氏

 シンポジウム5では、「生活習慣病と認知症『糖尿病と認知症』」をテーマに最近着目される糖尿病と認知症疾患との関連性が議論された。また、シンポジウム6「認知症に対する精神科的アプローチ」では、認知症の診断・治療・介護を行う精神科医が地域で果たす役割について、認知症疾患医療センターや地域包括支援センターとの連携、司法との関係、鑑定についてなど、臨床現場で求められる課題が話し合われた。

 さらに今学会の特別企画として、「私が認知症研究を始めたきっかけ」と題して、聖マリアンナ医科大学特別顧問の長谷川和夫氏、メディカルケアコート・クリニック院長の小阪憲司氏、同志社大学生命医科学部教授の井原康夫氏、鈴鹿医療科学大学保健衛生学部特任教授の葛原茂樹氏の4氏による特別企画講演が催され、わが国の認知症研究の先駆者による1970年代から現在までの研究とエピソードが紹介された。

認知症による生活障害を分析

 2日目のランチョンセミナーでは、筑波大学精神病態医学分野教授の朝田 隆氏が、アルツハイマー病の生活障害について、動画を用いながら分析し注目を集めた。朝田氏は「子が自分の親を殺(あや)める事件が増えている。その原因には介護殺人や介護心中が含まれると考えられる。背景には認知症ケアの方法がわからず、介護家族が不安やうつに高頻度で陥っていることがある」と述べ、家族が毎日病気の肉親と向き合う困難さを訴えた。その上で、「介護をしている人から聞くと、BPSDではなく本人の生活障害がケアの困難度を増しているようだ。私たちはどのようにしてこの生活障害が起きているのかを分析し、本人の生活上の困難さを認識することで、支援する糸口が見つけられる」と解決策を示唆した。

 認知症になると、「片手で食事をする」「服の着脱の方法がわからなくなる」「トイレで失敗をする」などさまざまな困難に陥る。どうしてこのようなことが起こるのかを朝田氏は動画を用いて説明。さらに、一つひとつの場面をスライドで紹介した。例えば「食事」という行為は、「食べる場所に行く(歩行・移動)」「食べるのに適した位置に座る」「食物を認識する(食物だとわかる)」「食物を操作する(箸やスプーンなどを適切に使う)」「食物を口まで運ぶ」「口を開けて食物を受ける(茶碗を持つ、茶碗を口に近づける)」「食物を噛む(咀嚼)」「飲み込む(嚥下)」といった一連の動作ができて初めて完結する。認知症の人は、これらすべてができないのではなく、例えば箸の使い方がわからないなど、この中のどこかで障害が起こると食事が困難になってしまう。

 どこができないのかを、「認識できるか」「認知できるか」「順番がわかるか」など行動を場面ごとに分析すると、本人がどこで困っているのかが見えてくる。見えてきたらできない部分をアシストすれば、本人は食事する一連の行為を完結できるようになる。そうなれば再び本人も食事を楽しむことができるようになる。

ランチョンセミナーで講演する筑波大学精神病態医学分野教授・朝田 隆氏

座長を務めた国立長寿医療研究センター・認知症先進医療開発センター長・柳澤勝彦氏

 だが、そのためには評価をしていく必要がある。「食品をまんべんなく摂取するか」「左右の手の協調技術はどうか(茶碗や皿からこぼさない、協調した効率的な動作、手前に引き寄せるなど)」「手づかみ、犬食いなどはないか」「熱いものを吹くなど食物の温度に対応が可能か」など、一点ずつ評価を行わなくてはわからない。朝田氏はこうした細かい分析が必要なことを、実際に何かの動作を行う場合に脳の電位部位がどのように変化するのかを示す波状の線が刻々と変化していく画像を紹介しながら解説した。「認知症の生活障害への科学的対策は、認知症専門医、神経心理学・認知症リハビリテーションの専門家、fMRI(機能的磁気共鳴画像)や脳磁図など脳機能評価に精通した研究者らが連携して可能になる」と述べた。こうした研究が進めば、家族や介護スタッフが適切な支援を行うことができ、本人も穏やかに暮らしていくことが可能になるのではないだろうか。

「Dementia Support 2012 Winter」へ

ページトップへ

第30回 日本認知症学会学術集会 超高齢社会を医学・医療がどのように支えるかページをご覧の皆様へ

エーザイのアルツハイマー型、レビー小体型認知症治療薬「アリセプト」のサイトです。
アルツハイマー型、レビー小体型認知症の患者様とそのご家族を支え、コミュニケーションをサポートするツールも掲載しています。