認知症いろいろ たしかめてください、患者さんの「認知機能」

認知症特集

認知症新時代への挑戦

鳥取大学医学部 脳神経医科学講座脳神経内科学分野教授 中島健二

 認知症医療は、長く有効な治療法がなく、軽視されてきた傾向がある。最近、社会的にも認知症への関心が増大している。それにはいくつかの要因がある。まず、認知症者数の急速な増加がある。この増加には、高齢化による高齢者の増加、認知症発症の増加、認知症への関心が高まってこれまで見過ごされていた軽度の認知症の早期診断が進歩したこと、といった可能性が影響していると考えられる。最近の調査では、認知症のなかでも軽度の認知症の増加が指摘されている。

 多数の認知症患者に対応するには専門医が少な過ぎるため、日本認知症学会や日本老年精神医学会では、専門医制度を設けて認知症診療を担う専門医育成に取り組んでいる。ちなみに、日本認知症学会における専門医は、2011年度末において707人である。まだまだ不足は明らかで、一層の専門医育成が求められる。認知症医療は、神経内科医、精神科医、老年科医など、幅広い領域の医師が参画しないと対応できず、また、医師のみならず他職種の参画も必要である。

 治療薬に関する話題も増えている。認知症の大部分を占めるアルツハイマー病では、脳のアセチルコリンが低下している。アセチルコリンを増加させるために薬剤開発研究が進められ、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬が開発された。現在、アルツハイマー病治療薬として国際的にも最も使用されているアセチルコリンエステラーゼ阻害薬はドネペジルである。ドネペジルは、1999年にわが国でも使用可能となった。それまで全く治療薬のなかったアルツハイマー病において初めての治療薬の登場であり、画期的な治療薬の登場であった。すでに、13年間の使用経験が積み重ねられ、種々の臨床的な工夫が検討されてきた。米国では、23mg製剤も認可されている。一方、ドネペジルにより改善が明確でないノンレスポンダーの存在が、ドネペジルによる治療における課題の一つとして指摘されてきた。

 そのようななか、2011年になって、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンという3種類の新たなアルツハイマー病治療薬がわが国の臨床現場に登場した。

 ガランタミンは、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用のみならず、ニコチン性アセチルコリン受容体へのアロステリックな増強作用を有す。このアロステリック作用というのは、アセチルコリン結合部位とは異なる部位に結合して受容体の感受性を高める作用である。

 リバスチグミンは、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用とブチリルコリンエステラーゼ阻害作用を併せ持つ。また、パッチ剤という特徴を有し、吸収や血中濃度の上昇が緩徐であるメリットが期待されるとともに、介護者が貼付状況を目で確認できるという特徴を有す。

 メマンチンは、他の抗アルツハイマー病治療薬と異なって、NMDA受容体拮抗作用を示す薬剤である。NMDA受容体は、グルタミン酸受容体サブタイプの一つであり、過剰なグルタミン酸は神経細胞毒性を示し、記憶や学習障害を生じる。メマンチンは、過剰なNMDA受容体の活性化を抑制して神経細胞を保護し、記憶・学習障害を抑制する。作用機序が異なるところから、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬との併用も可能である。また、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の効果が認められなくなった段階でもその効果が期待される。

 さらに、これらのアルツハイマー病治療薬には神経保護的な作用も推定されている。アミロイドワクチンなど、これまでdisease modifying therapyとして開発されてきた薬剤の臨床試験が必ずしもうまく進んでいない現状から、これらのすでに市販されている薬剤にも神経保護的作用があることは、興味あることと思われる。

 3種類のアルツハイマー病治療薬が加わることにより、アルツハイマー病治療において、それらの使い分けや併用療法なども課題になってきている。これらの薬剤の投与や選択にあたっては、患者・家族に疾患や治療の必要性、薬剤の特徴、副作用などについて十分に説明し、よく相談しながら選択していくことが重要であると思われる。

 認知症の治療には、薬物療法のみならず、ケアやリハビリテーション、介護なども含めたトータル的な医療が求められる。これらの認知症における非薬物治療の重要性はこれまでも強調されてきているところであるが、それらのエビデンスレベルは高くない。今後、非薬物治療のより高いエビデンスを作りながら、薬物療法のみならずより有効な非薬物療法を確立していく必要がある。

 一方、地域においては、地域連携や地域で取り組む認知症対応も大切である。行政に頼るだけでなく、地域に適した、地域による、地域のための地域連携を構築して認知症への対応を行っていくことも重要と思われる。認知症者個人にとって、真に安心して生活できる地域を形成していく努力が求められよう。

 4種類のアルツハイマー病治療薬が使用可能となり、認知症医療は新たな時代に入ったと言える。今後、臨床現場での抗認知症薬の使用経験が蓄積され、より有用な使用法、使い分けなどが明らかになっていくものと期待される。こういった観点からも、今後ますます認知症者の立場に立脚した医療が求められてくると思われる。わが国における認知症診療の一層の発展を期待したい。

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