認知症いろいろ たしかめてください、患者さんの「認知機能」

認知症特集

座談会

認知症を抱える本人の視点

3. 認知症医療の環境整備と連携
認知症を抱える本人のための支援とは

朝田 厚生労働省の班研究で認知症の医療基盤を調査して浮き彫りになったのは、病診連携や病病連携の構築、認知症に心筋梗塞や脳卒中、がんといった命に関わる合併症への対応、もう一つはBPSDが重度の場合にどのように連携するかという問題です。最初に、武田先生の施設では重篤な身体合併症に対してどのような連携体制で臨んでいますか。

武田 国立長寿医療研究センターの「もの忘れセンター」の病棟には、BPSDや身体合併症を有する認知症の人が入院されます。認知症の人が身体合併症を来しても「普通に」治療が受けられることが重要です。認知症のある人の身体合併症に対して消極的な対応をとる医療機関もありますが、実際には落ち着いて治療を受けられる認知症の人も多いので、認知症というラベルをはらず、冷静に状態を把握したうえで対応を考える必要があると思います。当院では、例えば認知症の人が消化器疾患を合併した場合、もの忘れセンターの外来を担当する医師と消化器科の医師が一緒に診療にあたりますので、消化器科の医師も安心して診療にあたれるのではないかと思います。身体合併症による入院では比較的短い期間で退院することが多いのですが、退院後はかかりつけ医や訪問診療医と連携しながらきめ細かくフォローアップしていきます。たいていは現状の体制で対応できています。また、身体合併症治療のための入院中にBPSDが現れた場合も、帰宅するとBPSDがすべて治まってしまうこともありますので、住み慣れた場所で治療を受けたいという本人の希望もかなえられるように在宅医療の選択肢も可能となる体制の整備がポイントではないかと思います。

朝田 高度な医療技術により合併症を管理する場合でも、利用可能なリソースを最大限に活用すれば、在宅医療に移行して地域で生活できる可能性があるということですね。
 認知症の人が入院される場合、片山先生はどのような点に配慮していますか。

片山 認知症の人が身体合併症の治療で入院すると医療が基本になってしまい、日常生活の行為ができなくなることがあります。それを回避するには、入院中の生活支援にも力を入れることです。例えば、歯磨きを一緒に楽しんでやってくれる人、そばに寄り添ってくれる人がいる環境作りです。認知症の人は周りの人が入れ替わると混乱しやすいので、在宅あるいは福祉施設へスムーズに移行することも視野に入れると、できるだけ同じ人が寄り添って援助できる制度が望ましいと思います。

朝田 宮島局長が先ほど家族負担の問題を指摘されましたが、少子高齢化が進むこの国において、ケアを担う人的資源の問題は避けて通れません。「日本の隠れた最大の介護力は家族にあり」と言われた時代からすっかり西欧型に変容し、家族による介護はますます難しくなると予想されます。最後に、今後の認知症介護には医療政策を含めてどのようなアプローチが必要なのか、宮島局長のビジョンをお聞かせください。

宮島俊彦氏

宮島 この問題は三つの視点でとらえることができます。一つ目は、認知症の方をケアする家族に対してどのようなサポートを提供していくかです。現実には家族間のトラブルも少なくはありません。例えば、介護家族をサポートできるセンターを整備し、認知症について正しい理解を持ってもらう、家族同士で話し合える、あるいはカウンセラーと相談できるような環境の提供です。
 二つ目は、認知症を抱えている独居者あるいは認知症の方がいる老老世帯をどのように支えていくのかという問題です。介護保険制度では今年(平成24年度)4月から「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を創設しました。ヘルパーや看護師が密接に連携しながら、小規模多機能型の訪問サービスやショートステイなどを提供する体制を整備していますが、介護保険の給付のみでは限界があります。やはり、地域レベルで認知症への理解を深めてもらい、例えば徘徊したときに地域の人々がその方を発見し安全に保護する仕組み、地域で見守っていく体制がないと認知症の方が地域社会でその人らしく生きる環境を作るのは難しい。介護保険制度と地域社会の支援体制をいかに効果的に組み合わせるかが重要な鍵となると思います。
 三つ目は、医師、看護師、ケアマネジャー、ヘルパーが職種横断的なチームを作り、初期段階から共通認識に立って認知症に関わっていく体制の構築です。家族も交えたケアプランの検討会を開くこともやってもらう。そうした活動を通じて、本人と家族が安心して暮らせる仕組みを考えていく必要があると思います。

朝田 なるほど、同居家族をピアカウンセリングなどで支える、老老介護や認認介護といった新しい介護形態に対する社会的なサポートの充実、医療と介護の境界を乗り越えた共同作業による支援、この三つが新たな局面を迎える認知症医療・介護の大きな柱になるというご意見を賜り、今後の課題と展望が明らかになりました。本日は皆様からの活発なご討議にお礼申し上げます。

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