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脱抑制行動、常同行動

熊本大学医学部附属病院 神経精神科講師 橋本 衛

はじめに

 本稿で取り上げる脱抑制行動、常同行動は、その発現機序が前頭葉障害と強く関連しているため、前頭葉を主病変とする前頭側頭型認知症(Frontotemporal dementia:FTD)において極めて特徴的な症状である。アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)のような後方病変を主体とする疾患では、病期が進行するまでは目立たない症状であり、これらの症状を適切に把握することは認知症の鑑別診断において有用となる。本稿では、脱抑制行動、常同行動の症候とその対応方法を中心に概説する。

脱抑制行動

 脱抑制とは、「状況に対する反応としての衝動や感情を抑えることが不能になった状態」のことを指す。すなわち、患者は外的な刺激に対して衝動的に反応したり、内的な欲求を制御することができず本能のおもむくままに行動したりする。FTDにおいて病初期から認められ、FTDの中核となる症状の一つである1)
 脱抑制行動は様々な生活場面で出現し、その内容はマナーや礼儀正しさの欠如といった軽微なものから、反社会的行動と呼ばれる違法行動まで幅広い。前者には、「人前でも構わずおならをする」のようなエチケットの欠如や、「葬式の最中に笑いだす」「診察中に鼻歌を歌う」「行列に割り込む」などのマナー違反が含まれる。後者としては、「万引き」「道端での放尿」「交通ルールの無視」などの比較的軽微な違法行為がみられることが多い。診察場面では、「あなた太っているわね」「白髪が多いわね」など、主治医に向かって思いつくままのことを口にしたり、診察室から勝手に出て行く立ち去り行動などがみられる。ケア場面では、「卑猥なことを話す」「異性の身体を触る」などの性的逸脱行動が問題となりやすい。問題行動をたしなめられても悪びれた様子はなく、あっけらかんとしていることが多い。病期が進行し無為、活動性低下が優勢になるにつれ、脱抑制行動は自然に減少する。脱抑制行動は前頭葉眼窩面の障害で出現するといわれているが、最近のMRIを用いた研究では右側の側坐核、上側頭皮質、内側側頭葉構造物の萎縮との関連性も指摘されている2)
 薬物治療は、抗精神病薬の鎮静作用を利用し行動の抑制をはかることが主となる。対応方法は、脱抑制行動を誘発するような刺激をできるだけ取り除くことが基本となる。性的逸脱行動に対しては、性衝動をため込まないように日頃からのスキンシップを心がけ、行為に及んだ場合は、他の作業に誘導するなどして気をそらせる。

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