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脱抑制行動、常同行動

常同行動

 常同行動とは「特定の行為、行動を繰り返す状態」を指し、FTDにおいて高頻度にみられる症状である3)。繰り返し膝をこすったり、パチパチと手を叩くような単純な運動を繰り返す症状から、「いつも同じ服を着たがる」「デイルームの決まった椅子に座りたがる」のような比較的まとまった行動まで幅広い。以下に代表的な常同行動を紹介する。

常同的周遊(roaming):
 毎日決まったコースを散歩して回る行動で、散歩の途中で同じ店で同じ物を買ったり、同じ飲食店で同じ物を食べたりすることが多い。患者によっては、周遊途中で万引きをしたり、他人の花壇から花を摘んでくるといった軽犯罪が問題となる。大雨や大雪のような通常であれば出かけないような天候でも出かけるなど、周囲の状況に行動は影響されにくく、家族の葬式の最中に周遊に出かけた例もある。車で決まったコースをドライブする例も少なくない。

時刻表的生活:
 常同行動が時間軸上に展開した場合、時刻表的生活となる。毎日決まった時刻に起床し、食事や散歩、テレビの時間などすべてスケジュール通りに行い、同じ時刻に就眠するような、列車の時刻表を思わせるような生活である。定刻が近づくと時計を凝視し、ちょうどその時間になると同時に行動を開始する例もある。時間軸上のスパンは分・時間単位にとどまらず、「月曜日はカラオケに出かけて帰りにうなぎを食べて帰る」「水曜日はデパートに出かけて巻き寿司を買ってくる」のように、行為が曜日に規定されている例もある。

滞続言語:
 繰り返し話される同じ内容の単語、語句、文章のことを指す。何を尋ねても自分の名前や生年月日など同じ語句を答えたり、事ある毎に「頭がバカになった、何もわからなくなった」と同じフレーズを繰り返したりする。比較的まとまった同じ内容の話を繰り返す症状は、「オルゴール時計症状」と呼ばれている。ADでよく認められる、話したことを忘れてしまって何度も同じ質問を繰り返す症状とは区別される。

常同的食行動異常:
 決まった少数の食品や料理に固執し、そればかり食べたり、作るように要求する症状である4)。女性の場合は調理が常同的となり、味噌汁の具がいつも同じ内容であったり同じ惣菜ばかり買ってきたりする。
 常同行動の神経基盤としては、最近のSPECTを用いた研究では、膝をこする、手を叩くような単純な常同行動は右前頭葉の血流低下と関連し、物の収集や確認行動のような複雑な常同行動は左側頭葉の血流低下との関連性が指摘されている5)
 一般的に徘徊に対しては、介護者が付き添って歩くことが推奨されている。しかし、近時記憶や視空間認知機能が保たれているFTDでは、毎日のように周遊に出かけても道に迷うことはなく決まった時間に帰宅するので、周遊コースの安全性が確認されかつ周遊の間に万引きなどの反社会的行動に及ぶことがなければ、あえて制止する必要はない。FTD患者にみられる暴力や興奮は常に生じるわけではなく、多くは常同行動などの自身が固執する行動を制止された際に生じやすいので、常同的周遊に限らず他の行動においても、明らかな迷惑行動となっていない限り本人の自由にさせることが望ましい。周遊の途中でいつも同じ店で同じパンを万引きする患者に対して、家族があらかじめ店屋と相談しお金を支払っておくことで周遊を続けることができた例もあるので、患者の行動パターンを把握し、行動にあわせて周囲の環境を調整する。
 しかし、患者の中にはどうしても社会的に許容できない行動が常同化している場合がある。このような場合には、社会的に問題となる行動を、デイサービスに毎日通うような新しい適応的な行動パターンに置き換えるように働きかける。このような非薬物療法は、ルーチン化療法と呼ばれ一定の効果を上げている6)。薬物療法としては、フルボキサミンなどのSSRIが常同行動に対して有効であったと報告されている7)

文献
  1. 1)Rascovsky, K., et al. : Sensitivity of revised diagnostic criteria for the behavioural variant of frontotemporal dementia. Brain, 134, 2456-2477 (2011)
  2. 2)Zamboni, G., et al. : Apathy and disinhibition in frontotemporal dementia : Insights into their neural correlates. Neurology, 71, 736-742 (2008)
  3. 3)Mendez, M. F., et al. : Stereotypical movements and frontotemporal dementia. Mov. Disord., 20, 742-745 (2005)
  4. 4)Ikeda, M., et al. : Changes in appetite, food preference, and eating habits in frontotemporal dementia and Alzheimer's disease. J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry, 73, 371-376 (2002)
  5. 5)McMurtray, A. M., et al. : Variations in regional SPECT hypoperfusion and clinical features in frontotemporal dementia. Neurology, 66, 517-522 (2006)
  6. 6)Ikeda, M. : Fronto-temporal dementia. Richie, C. W., et al. ed., Therapeutic strategies in dementia. Clinical Publishing, Oxford, 287-299 (2007)
  7. 7)Ikeda, M., et al. : Efficacy of fluvoxamine as a treatment for behavioral symptoms in frontotemporal lobar degeneration patients. Dement. Geriatr. Cogn. Disord., 17, 117-121 (2004)

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