認知症いろいろ たしかめてください、患者さんの「認知機能」

認知症特集

認知症のパラダイムシフト 認知症の人の生活を知る

易怒性

岩手医科大学医学部 災害医学講座特命教授 高橋 智

はじめに

 認知症の症状は、記憶障害、実行機能障害などの中核症状と不安、抑うつ、妄想、暴力、暴言、徘徊など、従来、周辺症状と呼ばれてきた認知症に伴う行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia、以下BPSD)に分けられる。BPSDは、認知症をもつその人にとってたまらない苦しみであるが、介護者にとっても、肉体的、精神的に、膨大な介護負担の増大を伴う。易怒性は、アパシーとともに、アルツハイマー病(AD)で頻度の高いBPSDであるが、アパシーは脳の病理の進行とともに、出現すべくして出現している例が多いのと比較して、易怒性は周囲との関わりが大きな要因であることが多い。すなわち、認知症の人の生活を知り、気持ちを理解することで、ケアの質の向上により、改善できる事例も多い。

ADにおける病期と易怒性

 いらいらして些細なことで不機嫌になる、怒りだす、などの易怒性は、アルツハイマー病初期、さらには認知症に至っていない軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment、以下MCI)の時点からみられる1)2)(図1)。周囲が気づかない間に、患者自身は、もの忘れを自覚し、不安が芽生え、焦燥感が募り、易怒性が出現する。
 BPSDを主訴に専門医を受診する事例では、「大声を出して叫ぶ」「介護に従わず暴力を振るう」「夜中に徘徊する」など、重篤なBPSDの出現をきっかけに、介護者に連れられて受診することが多い。しかし、この時期では、自傷他害が危惧されることも多く、入院治療や鎮静のための強力な薬物療法が必要になることが少なくない。しかも、介護者の疲労はピークに達しており、介護への情熱も冷めているため、介護者に、BPSD治療における適切なケアや非薬物治療介入の重要性を説明しても、なかなか受け容れられない。
 もの忘れを早期に見出し、早い時期から認知症の病態およびBPSD出現のメカニズムとケアの重要性を介護者に十分に説明しておくことで、早期に易怒性に気づき、ケアの改善と必要に応じた最小限の薬物治療を併用することで、激しいBPSDに進展するのを防ぐことが可能となる。
 認知症が進行すると、言語性コミュニケーションが低下する一方で、ADLの低下に伴い、着衣、入浴、排泄への介助など、身体接触を含むケアが必要となる。この際、眼差しや触れ合い、ゆとりなど、適切な非言語性コミュニケーションがとれないまま、一方的にケアが提供されると、身体接触を認容できず、易怒性から、興奮、暴言・暴力、拒絶、介護への抵抗などに発展することが多い。

図1 健常者、MCI、AD患者のirritabilityの有病率

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