認知症いろいろ たしかめてください、患者さんの「認知機能」

認知症特集

本人視点からアリセプト®を再考する

ドネペジル(アリセプト®)は“興奮”させる薬剤か?

首都大学東京 大学院人間健康科学研究科教授 繁田雅弘

 ドネペジル(アリセプト®)の服用中、「興奮」するようになったとの声を聞くことがある。様々に異なった状態が「興奮」と称されている可能性もあるが、問題となるのは単なる気分の高揚でない過剰な感情反応で、その内容は易怒性や易刺激性、攻撃性といったものだろう。本稿では臨床試験のデータを参照しながら、自験例の病像をふまえつつこの「興奮」について考えてみたい。

臨床試験や再審査のデータより

 まずは、医薬品インタビューフォーム1)に掲載されている、国内第III相臨床試験や再審査における副作用/精神症状の頻度を参照した。項目の中で「興奮」とみなされる可能性があるのは「攻撃性」、「激越」、「怒り」、「落ち着きのなさ」、「異常行動」といった症状である(表1)。しかしこれらの報告は臨床現場から推測される頻度に比べ、随分と低いように思われる。
 また、アルツハイマー型認知症(AD)患者272人を対象に、焦燥性興奮(agitation)に対するドネペジルの12週間の治療効果を検討した報告がある。結果としてはプラセボと差がなかったが2)、評価に用いられたCMAI(Cohen-Mansfield Agitation Inventory)やNPI(Neuropsychiatric Inventory)のスコアは、プラセボとドネペジルとの間で統計的に有意差がないだけでなく、値自体にほとんど差がなかった(p値:CMAI0.98、NPI0.95)。データの本来の使用目的とは異なるが、この結果からドネペジルはagitationを改善しなかったが、助長もしなかったと理解することが可能である。このようにagitationの治療試験の結果を参照しても、ドネペジルが「興奮」を引き起こしている様子は見て取れない。

表1 インタビューフォームにみる各精神症状の発現率(%)

ドネペジル(アリセプト®)
軽〜中等度 軽〜中等度 高度
承認時 承認時
+再審査終了時
承認時
攻撃性 0 0.16 0.24
激越 0.9 0.51 0.61
怒り 0 0.24 0.22
落ち着きのなさ 0.7 0.27 0.49
異常行動 0 0.05 0.05

注:インタビューフォームは、日本病院薬剤師会が製薬企業に依頼して作成している薬品情報冊子。添付文書には含まれない詳細なデータなどが含まれており、一般に配布されている。インターネットでも参照することができる。

認知症新時代への挑戦トップへ

ページトップへ

ドネペジル(アリセプト®)は“興奮”させる薬剤か?ページをご覧の皆様へ

エーザイのアルツハイマー型、レビー小体型認知症治療薬「アリセプト」のサイトです。
アルツハイマー型、レビー小体型認知症の患者様とそのご家族を支え、コミュニケーションをサポートするツールも掲載しています。