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認知症特集

本人視点からアリセプト®を再考する アリセプト®の投与意義

MCIで抗認知症薬を投与すべきか?

抗認知症薬の神経細胞保護作用

 より基礎的なデータとして、神経細胞保護作用に関する報告が散見される。AD同様にMCIでもアミロイド蓄積が豊富に見られ、アミロイドカスケード仮説に基づけばこのアミロイドが神経細胞機能を低下させ、最終的には神経細胞死を導くと考えられている。その最終段階を、上市されている抗認知症薬が抑制可能か、培養細胞で検討したものである。
 その中では、メマンチンが、NMDA受容体への拮抗作用により細胞内へのカルシウムイオンの不要な流入を予防し、神経細胞保護作用をもたらすとされている。
 ドネペジルは直接あるいは間接的にニコチンα4およびα7受容体を刺激し、グルタミン酸投与で誘発される神経毒性を著明に抑制することが初代培養神経細胞系で示され9)、ガランタミンはアセチルコリンエステラーゼ阻害作用に加えてあわせもつAPL(allosteric potentiating ligand)作用により、Aβ共存下でのグルタミン酸誘発神経細胞死に対する保護効果をもたらすことが示されている10)。リバスチグミンは、培養の神経細胞の軸索を伸張する作用も持っており、シナプスにおける神経伝達の促進と神経変性や炎症の抑制、神経保護作用が期待されている11)

おわりに

 ここまでMCIへの抗認知症薬投与を考えるにあたり、臨床ならびに基礎研究レベルでのいくつかの参考となる文献を紹介してきたが、絶対に使用すべき、とする確たる証拠にまでは至っていない。
 ここで自験例を振り返ってみると、MCIでアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療の結果、認知機能のスコアについては改善方向に進み、本人家族いずれからも喜ばれたケースも多く経験してきた。一方で、不安感や焦燥感が増加した症例や、周囲への暴言、暴力が増えたケース、急に他人の助言を受け入れられなくなったケースなど、治療介入により症状が悪くなった症例を少なからず経験してきた。これらはいずれも速やかに抗認知症薬を中止することで以前の状態に戻ったことから、抗認知症薬による影響と考えた。
 確かに持続的に使用することで神経保護作用を期待できるのかもしれないが、それ以上に本人や家族の負担を増すような症状が続くようであれば本末転倒のように思う。
 以上からMCI患者への抗認知症薬の投与は、望ましい効果を期待しつつも、薬物による新たなBPSD症状を作っていないか常に点検しながら、慎重に投与することを条件に是としたい。

文献
  1. 1)Petersen, R. C., et al. : Apolipoprotein E status as a predictor of the development of Alzheimer's disease in memory-impaired individuals. JAMA, 273 (16), 1274-1278 (1995)
  2. 2)Weiner, M. W., et al. : The Alzheimer's disease neuroimaging initiative : progress report and future plans. Alzheimers Dement., 6 (3), 202-211, e7 (2010)
  3. 3)Doody, R. S., et al. : Donepezil treatment of patients with MCI : a 48-week randomized, placebo-controlled trial. Neurology, 72 (18), 1555-1561 (2009)
  4. 4)Salloway, S., et al. : Efficacy of donepezil in mild cognitive impairment : a randomized placebo-controlled trial. Neurology, 63 (4), 651-657 (2004)
  5. 5)Petersen, R. C., et al. : Vitamin E and donepezil for the treatment of mild cognitive impairment. N. Engl. J. Med., 352 (23), 2379-2388 (2005)
  6. 6)Winblad, B., et al. : Safety and efficacy of galantamine in subjects with mild cognitive impairment. Neurology, 70 (22), 2024-2035 (2008)
  7. 7)Feldman, H. H., et al. : Effect of rivastigmine on delay to diagnosis of Alzheimer's disease from mild cognitive impairment : the InDDEx study. Lancet Neurol., 6 (6), 501-512 (2007)
  8. 8)Schneider, L. S., et al. : Treatment with cholinesterase inhibitors and memantine of patients in the Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative. Arch. Neurol., 68 (1), 58-66 (2011)
  9. 9)Takada, Y., et al. : Nicotinic acetylcholine receptor-mediated neuroprotection by donepezil against glutamate neurotoxicity in rat cortical neurons. J. Pharmacol. Exp. Ther., 306 (2), 772-777 (2003)
  10. 10)Kihara, T., et al. : Galantamine modulates nicotinic receptor and blocks Abeta-enhanced glutamate toxicity. Biochem. Biophys. Res. Commun., 325 (3), 976-982 (2004)
  11. 11)Zhou, X., et al. : Acteylcholinesterase inhibitor rivastigmine enhances cellular defenses in neuronal and macrophage-like cell lines. Transl. Res., 153 (3), 132-141 (2009)

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