認知症いろいろ たしかめてください、患者さんの「認知機能」

認知症特集

認知症診療10年の変遷と地域連携

三重大学大学院医学系研究科 認知症医療学講座助教 木田博隆
三重大学大学院医学系研究科 認知症医療学講座准教授 佐藤正之
三重大学大学院医学系研究科 神経感覚医学講座・認知症医療学講座教授 冨本秀和

はじめに

 前稿でアリセプト®の保険適用前後で認知症発症から受診までの時間が短縮し、その結果として初診時の認知機能障害が比較的軽度となったこと、初診時の症状に占めるBPSDの割合が8分の1にまで低下したことが示された。その背景として、治療薬の登場によって医療者側の積極的介入や啓発活動があり、受診を促す効果があったことが推測される。さらに、認知症診療に神経内科、脳神経外科など精神科以外の診療科が加わり、早期診断のための様々なバイオマーカーが登場した。介護中心からシフトして医療が大きな役割を担うようになり、周辺症状の治療に加えて中核症状に対する薬物療法が普及し、それに伴って医療者の理解と一般市民への啓発が進んだ過去10年であった。
 昨年からは中核症状に対する治療薬の選択肢が追加され、初期の中核症状で診断され、早期にBPSDが発見、対応される機運となってきている。周辺症状に対する介入は、精神科単科から関連診療科との連携や病病・病診連携、そして多職種連携へと広がり、内容の充実した連携システムの構築が今後の高齢化社会を支える地域包括ケアに不可欠である。

認知症地域連携について

 認知症のネットワーク構築は全国各地で行われているが、医療と福祉・介護・行政・法曹との垣根が高く、関連専門職の間でも情報共有や連携の不足が指摘されている。一方、啓発が進んだとはいえ、一般市民の認知症への理解不足、地域での患者に対する差別的扱いなども問題となっている。そのため適切な医療機関への紹介、早期の鑑別診断と治療介入がなされないまま、高齢者の増加とともに認知症患者が重症化しBPSDや高齢者虐待、詐欺被害などの問題が全国で多発している。そのような状況を受けて、私どもの講座では津市を中心とする二次医療圏で、認知症の地域ネットワークを構築してきた。
 ネットワーク構築は行政からの支援が当初得られなかったため、関連多職種間や医療・介護に跨る連携を目指して自主的に活動してきた。まず、認知症医療学講座が中心となって津市内の全9カ所の地域包括支援センターに参加を募り、認知症事例相談会を毎月開催するようにした。各施設が抱える困難事例について定期的に多職種検討会を行い、個別事例の問題解決に相互協力を行っている。看護師、薬剤師などのコメディカルの参加が乏しい状況もあり、認知症専門医と地域包括支援センターという、医療と介護の両極が協力する形でネットワーク構築を開始したが、現在では関連多職種間の顔の見える関係構築につながっている。また、中勢認知症集談会では、医療と福祉が共通の言語を得るために必要な知識を、講演という形で年に4回提供している。世話人会では、津地域の認知症連携のより良いあり方を相談する場を設けている。
 県下各地でも様々な成り立ち方で認知症連携のシステムが立ち上がってきている(図1)。今後積極的に取り組んでいくべき課題としては、患者・家族中心の多職種連携や地域づくりやICTの活用、メディカルおよびソーシャルキャピタルの明示、さらなる啓発活動、患者・家族の居場所づくり、患者・家族の支援・相談など山積している状況がある。地域包括ケアに大きく舵を切りつつある厚生労働省の方針のもと、当講座としてはアクションリサーチとして活動に関わりながら、質的研究の手法なども駆使して認知症地域医療連携システム構築の方法論の確立を目指している。

図1 三重県認知症ネットワーク概念図

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